求人を見ていると「パート募集」と書かれたものもあれば「アルバイト募集」と書かれたものもある。同じ店で仕事内容や時給がパートとアルバイトは何が違う?法律上は区別されないのに呼び方が違う理由
求人を見ていると「パート募集」と書かれたものもあれば「アルバイト募集」と書かれたものもある。同じ店で仕事内容や時給がほとんど同じなのに、昼はパート、夕方からはアルバイトと呼び分けていることさえある。
では、パートとアルバイトは何が違うのだろうか。
結論からいえば「パート」「アルバイト」という呼び方そのものに、法律上の明確な区別はない。
厚生労働省も「パート」「アルバイト」といった呼称の違いによって、パートタイム・有期雇用労働法の対象が決まるわけではないとしている。法律上の扱いを左右するのは名前ではなく、所定労働時間や契約期間など実際の労働条件である。
それなら、なぜ日本では二つの名前が使われ続けているのだろうか。その理由をたどると、現在の働き方の違いというより、二つの言葉が日本で広まった経緯の違いが見えてくる。
法律が見ているのは名前ではなく働き方
パートタイム・有期雇用労働法では「短時間労働者」を、同じ事業主に雇われる通常の労働者より1週間の所定労働時間が短い労働者としている。「パートタイマー」「アルバイト」など会社での呼び方が違っても、この条件に当てはまれば短時間労働者である。
反対に「アルバイト」と呼ばれていても、通常の労働者と1週間の所定労働時間が同じなら短時間労働者には当てはまらない。ただし期間の定めがある契約で働いていれば、有期雇用労働者として同法の対象になる場合がある。
パートかアルバイトかという名前だけでは、法律上の扱いは決まらないということだ。
興味深いのは総務省の「労働力調査」である。この調査では「パート」「アルバイト」を実際の就業時間や日数ではなく、基本的に勤め先でどう呼ばれているかによって区分している。
記入要領にも「パート」「アルバイト」は就業時間や日数に関係なく、勤め先でそのように呼ばれている人を指すと明記されている。国の統計でさえ、両者を労働時間だけで機械的に分けているわけではないのである。
パートとアルバイトはなぜ別の名前になったのか
「アルバイト」はドイツ語の Arbeit に由来する。ドイツ語では広く「労働」「仕事」を意味する言葉だが、日本では古くから学生が学業のかたわらにする仕事と結びついて使われてきた。
ここで一つ疑問が生まれる。アルバイトという言葉がすでにあったのなら、後に働き始めた主婦層も「アルバイト」と呼べばよかったのではないだろうか。
この疑問を考えるには、1960年代の日本の労働市場を見る必要がある。
高度経済成長によって人手不足が進むと、それまで非正規的な労働力の一角を担っていた臨時工は減少していった。代わって急速に増えたのが、労働政策研究・研修機構(JILPT)が「主として家庭の主婦層からなる労働者層」と説明するパートタイマーである。
当時広がったのは、単に主婦が仕事を始めたという現象ではなかった。家庭生活を続けながら、一日の一部だけ働くというパートタイム勤務そのものが、新しい労働力の活用方法として広がったのである。
ここに「パート」という呼び方が定着した背景がある。
学生の仕事にはすでに「アルバイト」という呼び方があり、学業のかたわらにする一時的な仕事というイメージがあった。それに対して高度経済成長期に増えた主婦層は、フルタイムではなく一定の時間だけ継続的に働く人たちとして労働市場に登場した。その勤務形態を表す英語の part-time に由来する「パートタイマー」が、この新しい労働者層の呼び名として広がっていったのである。
| 呼び方 | 当時強く結びついた働き方 |
|---|---|
| アルバイト | 学生が学業のかたわらにする仕事 |
| パート | 主婦層が家庭と両立しながら短時間で継続的に働く仕事 |
「主婦だからパート、学生だからアルバイト」という制度上の決まりが作られたわけではない。すでに学生の仕事を指す「アルバイト」という言葉が存在するなかで、1960年代以降に広がった短時間勤務の労働者層が「パートタイマー」と呼ばれ、別々の名前が定着していったと考えるとわかりやすい。
1980年代までには学生アルバイトも主婦パートも、企業にとって欠かせない柔軟な労働力になっていた。JILPTは両者について、学校や家庭という別の生活基盤を持ち、企業への強い帰属を前提としない労働力として整理している。
現在ではこの境界は大きく崩れている。学生がパートとして採用されることもあれば、学生ではない人がアルバイトとして長期間働くことも珍しくない。二つの名前が残っているのは、今も明確に違う働き方だからというより、別々の経緯で定着した呼び名がそのまま受け継がれているためである。
今は名前より実際の条件を見る
現在の求人では、会社によって勤務時間帯や想定する働き方に応じてパートとアルバイトを呼び分けることもあれば、年齢や勤務時間にかかわらず全員を「アルバイト」と呼ぶこともある。全国共通の基準で「ここからがパート、ここからがアルバイト」と線を引けるものではない。
求人を見るときに「パートだから安定している」「アルバイトだから短期間の仕事だ」と名前だけで判断するのは適切ではない。確認したいのは次のような実際の労働条件である。
- 週に何日、何時間働くのか
- 雇用期間や契約更新はどうなっているか
- 時給、昇給、賞与などの条件はどうなっているか
- 社会保険、有給休暇、福利厚生などの条件はどうなっているか
パートとアルバイトで待遇に違いが生じることはあるが、それは名称そのものが原因ではない。勤務時間や契約内容、会社の制度などが違えば、その結果として待遇も変わる。
有給休暇や社会保険も「パートだから対象になる」「アルバイトだから対象外」と決まるものではなく、それぞれの制度の要件と実際の働き方によって判断される。
「パート」と「アルバイト」という二つの呼び名は、現在の働き方だけを見ても境界がはっきりしない。それでも名前だけが残っているところに、学生がアルバイトをし、主婦がパートに出るという時代に形づくられた日本の働き方の歴史が映っているのである。
参考文献
