無料サービスは本当に無料か?料金表には載らない「やめる手間」

家族の写真を保存しているサービスで、無料の容量を使い切ったとする。有料プランに切り替えるか、写真を減らすか。別のサービスへ移す手もある。

最初は、空いている時間に移せば済むと思う。ところが、何年分もの写真を取り出し、別の場所に入れ直す作業を調べるうちに、だんだん億劫になる。家族にも保存先が変わることを伝えなければならない。父親はようやく今のアプリの使い方を覚えたところ、という家庭なら、説明する手間も増える。

提示された月額料金が、急に手頃に見えてくる。

こういう場面には、無料サービスとの付き合いがよく表れている。登録した日に料金表を読んでいても、数年後に自分がどれくらい面倒を感じるかまでは、なかなか想像できない。

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無料サービスはどこで元を取るのか

サービスを運営するにはお金がかかる。その費用を広告収入で賄うものもあれば、一部の利用者が払う料金で支えるものもある。無料で広く使ってもらい、容量や機能が足りなくなった人に有料プランを選んでもらう仕組みなら、無料の利用者も商売に組み込まれている。

だから、料金がゼロでも不思議はない。有料機能を必要とせず、無料の範囲で用事が済む人は、実際に一円も払わず使える。

気になるのは、有料プランを選ぶときの事情だ。使いたい機能が増えて料金を払う場合もある。冒頭の写真の例では、引っ越しが面倒だから今の場所に残る、という事情が加わっていた。使い始めたころにはなかった理由で、支払うかどうかを考えている。

使い慣れたサービスから離れる面倒

写真のファイルを取り出せれば、引っ越しは終わるのだろうか。

写真そのものに加えて、アルバムの分け方や家族が付けたコメントまで残したいなら、確認することが増える。保存先を変えたときに、そうした情報まで引き継げるとは限らない。誕生日ごとに整理していた写真が一つのフォルダにまとまってしまえば、撮影日を頼りに分け直す作業が待っているかもしれない。

サービスの中には、預けたデータと一緒に、整理に費やした手間もたまっていく。説明書を読まなくても使えるようになったことや、家族全員が同じ場所を見れば済むことも、長く使ううちに得た便利さだ。これを別の場所でもう一度整えるのは、ファイルの移動ほど簡単ではない。

無料枠を使い切るころには、生活の中にそのサービスの置き場所ができている。新しい写真を撮ればそこへ入れる。昔の写真を探すときもそこを開く。保存先を選んだことなど、普段は意識しない。

その状態で料金を提示されると、ほかのサービスとの価格差だけでは決められなくなる。月々の出費を抑えるために、次の休日を写真の整理で使いたいか。家族から使い方を聞かれるたびに説明できるか。料金表には載っていない面倒が、今の場所に残る理由として働く。

「嫌ならやめればいい」という言葉は、こうした作業を自分でしなくていい人には言いやすい。

しかも、使い続けると決めた理由を、利用者自身もうまく区別できないことがある。十分に満足しているのか、移す手間を考えたくないのか。忙しい時期なら、判断はひとまず先送りされる。写真はその間にも増えていく。

使い込む前にデータを取り出してみる

無料であることは、試す理由として十分だ。触ってみなければ使い勝手は分からないし、試した結果、そのまま長く使うこともある。

写真や文書を預けるサービスなら、その試用に「取り出す作業」も含めておくと、選ぶ材料が増える。数枚の写真を入れてアルバムを作り、それをまとめて取り出してみる。別のアプリで開けるか、付けた説明が残っているかまで見れば、保存できる容量だけでは分からなかった使い勝手に触れられる。

退会の手順が簡単でも、手元に必要なものを残す準備には時間がかかる場合がある。アカウントを消すボタンの場所だけ確認しても、この手間は分からない。

数枚なら、やり直しになってもすぐに済む。何年分もの写真を預けた後で初めて知るには、少々つらい仕様もある。

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