熱中症対策では、水分補給だけでなく、暑さを避けることも重要だ。エアコンや日陰を利用して体に加わる熱を減らし、こまめに水分を取る。危険な暑さでは不要不急の外出や運動を控え、作業は時間帯・内容・休憩の取り方を見直すことが基本になる。
水分補給と暑さを避けることは、どちらが大事というより役割が違う。水分補給は発汗や血液循環による体温調節を支え、エアコンや日陰への移動は体が受ける熱を減らす。日傘や帽子、休憩、必要に応じた塩分補給も、それぞれの場面で組み合わせていく。
なぜ水分補給だけでは熱中症を防ぎきれないのか
熱中症は、高温・多湿の環境や強い日差し、運動・作業による体内の発熱などによって体温調節が追いつかなくなり、体に熱がこもることで起こる。
人間の体は暑くなると皮膚への血流を増やし、汗をかいて熱を逃がそうとする。汗は皮膚の上で蒸発するときに体の熱を奪い、体温を下げる働きをする。湿度が高い日は汗が蒸発しにくいため、同じ気温でも体に熱がこもりやすい。
さらに大量に汗をかけば水分も失われる。脱水が進むと血液循環や発汗による体温調節を続けにくくなるため、暑さと脱水が重なるほど熱を逃がしにくくなる。
仕組みを単純化すると、
体に入る熱・体内で作られる熱 > 体から逃がせる熱
という状態が続くことが問題になる。だから熱中症予防では「体が受ける熱を減らすこと」と「失った水分を補うこと」の両方が必要になる。
熱中症を予防する5つの基本
エアコンや日陰を使って暑さを避ける
室内ではエアコンなどで温度を調整し、カーテンやすだれで日差しを遮る。屋外では日陰や日傘、帽子を利用し、予定を変えられるなら暑さの厳しい時間帯を避ける。
冷房が苦手だったり電気代が気になったりする場合も、暑い室内を我慢で乗り切ろうとするのは避けたい。遮光や扇風機・サーキュレーターを併用する、涼しい施設へ移動するなど、そのとき使える方法で熱の負担を減らす。
熱中症は屋外だけの問題でもない。室内で何もしていないときや就寝中にも起こるため、夜になっても寝室が暑ければ、必要に応じてエアコンを使うなど室温を確認しながら調整したい。
のどが渇く前からこまめに水分を取る
暑い日は、のどが渇いてからまとめて飲むのではなく、こまめに水分を取る。必要な量は年齢や体格、食事、活動量、発汗量、気温・湿度などによって変わるため、「1日○リットル飲めば大丈夫」と一律には決められない。
通常の日常生活なら、水や麦茶などで水分を補給できる。一方、アルコールは尿量を増やして体を脱水傾向にするため、水分補給の代わりにはならない。
経口補水液は、脱水時に水分と電解質を補給する目的で作られた飲み物だ。普段の水分補給を目的とする飲料とは役割が異なり、消費者庁も日常的に飲んだり大量に飲んだりしないよう注意を促している。熱中症に使用できる製品もあるため、必要な場合はパッケージの表示を確認して利用したい。
ナトリウムやカリウム、糖質などの摂取を医師から制限されている人は特に注意が必要だ。心臓や腎臓の病気などで水分量について指示を受けている場合も、一般的な目安より医師の指示を優先する。
追加の塩分補給は大量に汗をかいたときに考える
「熱中症対策には塩分も必要」とよく言われるが、夏だから普段の食事に加えて塩あめや塩分タブレットを取る必要があるわけではない。
日本高血圧学会は、3食きちんと食べている人の多くは必要な塩分をすでに摂取しており、熱中症予防のために日常的な塩分摂取を増やす必要はないとしている。一方、炎天下でのスポーツや屋外作業などで大量に汗をかいた場合には、水分とともに失った塩分を一時的に補うよう案内している。
普通の日常生活では水分補給を基本とし、大量に汗をかく場面では水分と塩分を補う、と分けて考えると分かりやすい。スポーツドリンクなども後者では選択肢になるが、「熱中症対策だから塩分は多いほどよい」ということではない。
最高気温だけでなく暑さ指数(WBGT)を見る
「今日は32℃だから危ない」「29℃だから大丈夫」と、気温だけで熱中症の危険度を判断するのは十分ではない。湿度や日射などによって、体から熱を逃がしやすいかどうかも変わるためだ。
そこで参考になるのが「暑さ指数(WBGT)」である。WBGTは気温、湿度、日射・輻射熱などを取り入れた指標で、環境省の「熱中症予防情報サイト」で各地の実況値や予測値を確認できる。気温との混同を避けるため、「WBGT 31以上」のように単位を付けずに表記する。
日常生活におけるWBGTの目安
| WBGT | 区分 | 日常生活での注意点 |
|---|---|---|
| 25未満 | 注意 | 一般に危険性は小さいが、激しい運動や重労働では注意する |
| 25以上28未満 | 警戒 | 運動や激しい作業では、定期的に十分な休憩を取る |
| 28以上31未満 | 厳重警戒 | 外出時は炎天下を避け、室内でも室温の上昇に注意する |
| 31以上 | 危険 | 外出はなるべく避け、涼しい室内へ移動する。高齢者は安静時でも注意する |
出典:環境省「暑さ指数(WBGT)について」掲載、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」をもとに整理。
スポーツでは、日本スポーツ協会の「熱中症予防運動指針」も参考になる。WBGTが28以上31未満では、激しい運動や持久走など体温が上がりやすい運動を避け、10~20分おきに休憩して水分・塩分を補給する。31以上では、特別な場合を除いて運動を中止する。
WBGTを見る目的は、数字を覚えることではなく行動を決めることにある。危険度が高まったら休憩を増やす、外出時間を変える、運動を中止するといった判断につなげたい。
急に暑くなった日や体調が悪い日は無理をしない
梅雨の晴れ間や梅雨明け直後など、急に暑くなった時期は注意したい。体がまだ暑さに十分慣れておらず、いつもと同じ運動量や作業量でも負担が大きくなりやすい。
体が徐々に暑さに慣れていくことを「暑熱順化」というが、猛暑の中で無理に運動して慣らすという意味ではない。普段の生活や無理のない活動を通じて徐々に慣れていくもので、急に暑くなった時期は休憩を増やし、活動時間や強度を控えめにすると考える方が安全だ。
睡眠不足、発熱、食欲不振、下痢などがある日も普段より暑さの影響を受けやすい。暑い日の予定は天気だけでなく、その日の体調も含めて判断したい。
場面によって優先する熱中症対策は変わる
基本となる考え方は共通していても、実際に何を優先するかは状況によって変わる。
| 場面 | 優先したい対策 |
|---|---|
| 自宅・室内で過ごすとき | エアコンなどで室温を調整し、こまめに水分を取る |
| 就寝するとき | 寝室の温度を確認し、必要なら夜間もエアコンを利用する |
| 買い物・通勤などで外出するとき | 暑い時間帯を避け、日陰・日傘・帽子を利用しながら休憩する |
| スポーツ・運動をするとき | WBGTを確認し、危険度に応じて休憩・運動の軽減・中止を判断する |
| 屋外で仕事・作業をするとき | WBGTや作業環境を確認し、作業負荷を減らして休憩と水分・塩分補給を確保する |
仕事として暑い環境で作業する場合は、個人の工夫だけで対処するものではない。厚生労働省は職場向けに、WBGTの把握と値に応じた対策、作業負荷の軽減、休憩場所の整備、水分・塩分補給、体調不良者を早期に把握する体制、重篤化を防ぐための手順づくりなどを求めている。勤務先のルールや管理者の指示も確認したい。
また、高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能と、暑さに対する体の調節機能が低下するため特に注意が必要だ。本人が「暑くない」「のどが渇いていない」と感じていても、家族や周囲が室温や水分補給、体調を確認する意味がある。
子どもも体温調節能力が十分に発達していないため、大人が体調の変化に気を配る必要がある。
熱中症が疑われるときはどうする?
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉のこむら返り、頭痛、吐き気、強いだるさなどが現れたら、活動を続けず熱中症を疑う。
可能であればエアコンの効いた室内など涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて体を冷やす。すぐに室内へ入れない場合は直射日光を避けられる場所へ移り、風を当てるなどして冷却する。特に首の周り、脇の下、足の付け根などを冷やす。
意識がはっきりしていて自分で無理なく飲める場合は、水分や必要に応じて塩分を補給する。
自力で水分を飲めない、意識がない、呼びかけへの反応がおかしい場合は、無理に飲ませず、すぐに119番で救急車を呼ぶ。 救急車を待つ間も涼しい場所へ移し、衣服をゆるめて体を冷やし続ける。
水分補給は熱中症対策として特に意識されやすい
水分補給は、熱中症対策のなかでも特によく知られている。Yahoo!ニュース「みんなの意見」で熱中症対策について尋ねた投票では、2024年は17,538人のうち48.7%が「こまめに水分補給をする」、2025年は1,958人のうち56.9%が「こまめな水分補給」を選び、それぞれ最多だった。
これは統計に基づく世論調査ではなく、2年で回答の選択肢も異なるため、日本人全体の行動や年ごとの変化を示すデータではない。ただ、水分補給が代表的な熱中症対策として意識されている一例として見ることはできる。
水分補給はすぐに実行できる分かりやすい対策だ。一方で実際の予防では、冷房のある場所へ移る、外出時間を変える、運動や作業の内容を見直すといった判断も必要になる。熱中症対策は何か一つを選ぶのではなく、その日の暑さや活動に合わせて組み合わせることが重要なのだ。
熱中症対策・応急処置の参考資料
- 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう」
- 厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」
- 環境省「暑さ指数(WBGT)について」
- 日本スポーツ協会「熱中症予防のための運動指針」
- 厚生労働省「令和8年 STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」
- 日本高血圧学会「減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条」
- 消費者庁「経口補水液について」
Yahoo!ニュース「みんなの意見」出典
Yahoo!ニュース「みんなの意見」は統計に基づく世論調査ではありません。本記事では「Yahoo!ニュース みんなの意見」と出典を明記し、LINEヤフーが定める二次利用条件に基づいて投票結果を利用しています。
