なぜネパールの洪水はあれほど大規模になったのか?2026年8月のニュースより

2026年8月、ネパールで起きた大規模な洪水。

茶色い水が静かに広がるような洪水ではありません。泥や岩を大量に含んだ流れが、道路や橋、建物までのみ込んでいく。なぜネパールの洪水は、あれほど大きなものになるのでしょうか。

モンスーンの国だから雨が多い。それも理由の一つです。

でも、ネパールの地形を見ると、それだけではありません。山に降った水が川へ集まり、土砂を巻き込みながら低地へ流れていく。その地形自体が、洪水を大きくしやすいのです。

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ネパールは巨大な「雨水を集める斜面」のような国

ネパールの国土は東西に長く、南北の幅はおよそ150〜250kmです。

その比較的短い幅の中に、標高約60mのタライ低地から、8,000mを超えるヒマラヤ山脈までがあります。

北に高い山があり、そこから南へ向かって谷や川が下っていく。山の斜面に降った雨は小さな沢へ入り、いくつもの流れが合わさって川になり、さらに大きな河川へ集まっていきます。

国土の大部分が、巨大な「雨水を集める斜面」のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。

しかもネパールでは、年間降水量のおよそ8割が6〜9月のモンスーン期に集中します。

高低差の大きな地形に短期間で大量の雨が降り、その水が谷や川へ集まる。平坦な土地に同じ量の雨が降る場合とは、かなり条件が違います。

厄介なのは水と一緒に「山」の一部まで動くこと

山間部では、水だけが流れてくるとは限りません。

急な斜面に大量の雨が降ると、地盤が水を含み、地すべりや土石流が起こりやすくなります。崩れた土や岩が川へ入り、そのまま水と一緒に下流へ運ばれていきます。

大量の土砂や大きな岩を含んだ流れになれば、橋や建物に与える衝撃も大きくなります。川岸や川底を削りながら進むこともあります。

さらに、崩れた土砂が川そのものをふさぐことがあります。

その後ろに水がたまり、せき止めていた土砂が崩れれば、大量の水と土砂がまとめて下流へ流れ出します。

ネパールで起きた過去の大規模洪水でも、豪雨だけではなく、地すべりや河道の閉塞、土砂の移動などが連鎖して被害を大きくした例があります。

一般に「洪水」と聞くと、川の水位が上がって水があふれる光景を思い浮かべます。

ところがネパールの山間部では、洪水、鉄砲水、土石流、地すべりが別々に起こるのではなく、一つの災害の中でつながることがあります。

ヒマラヤには氷河湖という要素もある

さらに標高の高いヒマラヤでは、氷河も関わってきます。

氷河が後退する過程では、モレーンと呼ばれる岩や土砂の堆積物や地形のくぼみに融水がたまり、氷河湖が形成・拡大することがあります。

こうした湖から大量の水が突然流れ出す現象の一つが、氷河湖決壊洪水(GLOF)です。

ただし、氷河湖が関係する洪水がすべて、湖をせき止めている堤防の決壊によって起こるわけではありません。

2024年4月のビレンドラ湖では、マナスル氷河末端から崩れた大量の氷が湖へ入り、その衝撃で生じた波によって湖水が外へ流れ出しました。このとき、モレーン堤防そのものは決壊していません。

2024年8月にエベレスト地方のタメで起きた洪水では、上流の岩石雪崩が氷河湖へ流れ込み、そこから始まった洪水が下流側の別の氷河湖にも影響する連鎖が起きました。

山が崩れ、その岩や氷が湖へ入り、動いた水がさらに下流へ影響する。ヒマラヤでは、こうした連鎖が洪水を一段大きなものにすることがあります。

上流では速く下流では広くなる

ネパールの北部から中部には険しい山地があり、南部にはインド国境へ続く平坦なタライ低地が広がっています。

山の中では狭い谷を水が急速に下るため、鉄砲水や土石流のような破壊的な流れになりやすくなります。ところが、その水が平坦な低地まで来ると、今度は横へ広がります。

上流では速くて破壊的な洪水になりやすく、下流では広い範囲が浸水しやすい。同じ川の流域の中で、洪水の姿が変わるのです。

さらに山間部では、集落や道路、橋を造れる比較的平らな場所が川沿いに限られることもあります。河川沿いの土地利用やインフラの配置も、被害の大きさに関係します。

ネパールには、雨や雪解け水を集める高い山があり、その水を急速に運ぶ谷があります。途中では岩や土砂が加わり、ときには氷河や氷河湖まで関係してくる。そして最後には、広い低地へ川が続いています。

ヒマラヤから低地までが、一続きの「水と土砂の通り道」になっている。一つの原因だけで洪水が巨大になるのではなく、いくつもの条件が同じ流域の中でつながっていること。それが、ネパールの洪水がときに想像以上の規模になる理由です。

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