部屋探しをしていると、当たり前のように目にする「6畳」。
ところが、同じ6畳でも、物件によって広く感じたり狭く感じたりします。そもそも畳1枚の大きさは、全国どこでも同じなのでしょうか。
実は、畳そのものの大きさは一つではありません。 京間、江戸間、中京間などがあり、実物の畳6枚分の面積には差があります。
さらに少しややこしいのが、不動産広告に書かれている「6畳」です。こちらは実際の畳6枚を意味するのではなく、1畳当たり1.62㎡以上という共通の表示基準が使われています。
昔ながらの畳と、現代の物件情報に出てくる「畳」。同じ言葉ですが、実は少し違う物差しなのです。
6畳は何平米? 不動産広告では9.72㎡以上
不動産広告で居室などを「6畳」と表示する場合、各室の壁心面積を6で割った値が、1畳当たり1.62㎡以上となる必要があります。
つまり、6畳と表示する場合の壁心面積は、9.72㎡以上が表示上の下限です。
1.62㎡ × 6畳 = 9.72㎡
同じように計算すると、8畳なら12.96㎡以上、10畳なら16.2㎡以上になります。
ここで大事なのは、1.62㎡が「実際の畳1枚の大きさ」ではないことです。
これは不動産広告で畳数を表示するための共通基準です。そのため、床がフローリングの洋室でも「6畳」と表示できます。
つまり現在の物件情報にある「6畳」は、畳が6枚敷いてあるというより、部屋の広さをわかりやすく表すための単位と考えたほうが実態に近いのです。
実物の畳は地域によって大きさが違う
一方、本物の畳1枚の大きさは全国共通ではありません。
代表的なものを比べると、次のようになります。
| 種類 | 畳1枚のおおよその寸法 | 1枚の面積 | 6枚分 |
|---|---|---|---|
| 京間 | 191cm × 95.5cm | 約1.82㎡ | 約10.94㎡ |
| 中京間 | 182cm × 91cm | 約1.66㎡ | 約9.94㎡ |
| 江戸間 | 176cm × 88cm | 約1.55㎡ | 約9.29㎡ |
同じ「6畳」でも、京間6枚分は約10.94㎡、江戸間6枚分は約9.29㎡です。
差は約1.65㎡。およそ1.7㎡違います。
6畳ほどの部屋で1.7㎡違うとなれば、決して小さな差ではありません。
戦後に普及した集合住宅では、江戸間より小さい「団地間」と呼ばれる畳も広く使われるようになりました。代表的な寸法として170cm×85cm程度が挙げられますが、畳の寸法には地域や建物による違いがあります。
「畳1枚」と聞くと、全国共通の長方形を思い浮かべがちですが、実際にはそう単純ではないのです。
なぜ京間と江戸間で大きさが違うのか
では、なぜ畳の大きさに地域差が生まれたのでしょうか。
背景にあるのは、家をどこから測って造るかの違いです。
京都などで使われてきた京間では、畳の寸法を基準にして柱の位置を決める「畳割り」という考え方が用いられてきました。
一方、江戸間では、柱の中心から次の柱の中心までの間隔を基準にする「柱割り」が使われます。
柱には太さがあります。柱と柱の中心間を先に決め、その内側に畳を収めようとすると、そのぶん畳を小さくする必要があります。
畳を基準に部屋をつくるのか、柱を基準に部屋をつくるのか。
この違いが、京間と江戸間のサイズ差につながっていったと考えるとわかりやすいでしょう。
畳そのものの歴史も古く、最初から現在のように部屋全体へ敷かれていたわけではありません。
平安時代には、板敷きの床に座具や寝具として置かれていました。その後、鎌倉時代から室町時代にかけて、書院造の発展などとともに、部屋全体へ敷き詰める使い方が広がっていきます。
畳は単なる床材ではなく、住宅の造り方そのものと結びつきながら変化してきたのです。
現代の「6畳」は、畳6枚分とは限らない
ここまで見ると、一つ面白いことに気づきます。
江戸間の畳を6枚並べると約9.29㎡ですが、不動産広告で「6畳」と表示する場合の下限は9.72㎡です。
逆に京間なら、実物の畳6枚で約10.94㎡あります。
つまり、
昔ながらの「畳6枚分」と、不動産広告の「6畳」は同じ物差しではありません。
もし地域ごとに異なる畳の寸法をそのまま使えば、「6畳」と書かれた物件同士でも広さを比べにくくなります。
そこで不動産広告では、実物の畳の種類とは切り離し、1畳当たり1.62㎡以上という共通基準で畳数を表示しています。
昔ながらの「畳」という呼び方を残しながら、中身は平方メートルで標準化しているわけです。
部屋を選ぶなら「6畳」だけではわからない
では、不動産広告で同じ「6畳」と書かれていれば、使い勝手も同じなのでしょうか。
そうとも限りません。
正方形に近い部屋なのか、細長い部屋なのか。柱が室内に出ているのか。収納やドアがどちらへ開くのか。ベッドや机を置ける壁がどれくらい残っているのか。
同じ面積でも、部屋の形によって家具の置きやすさはかなり変わります。
また、不動産広告で居室などの畳数を表示する際は、各室の壁心面積を基準に1畳当たり1.62㎡以上になるよう表示されます。
ただし、それだけで実際に家具を置ける広さまでわかるわけではありません。壁の厚みや柱、収納、扉の可動域などによって、使える空間は変わります。
家具の配置まで考えるなら、「6畳」という数字だけではなく、間取り図の寸法や柱の位置を確認し、必要なら内見時に実測するのが確実です。
「6畳」という言葉は、とても単純に見えます。
でも少し調べてみると、そこには地域ごとに異なる住宅の造り方と、現代の不動産広告で広さをそろえるためのルールが重なっています。
普段何気なく見ている「6畳」は、昔の暮らしの単位を、現代向けに意味を変えながら使い続けている言葉なのです。
参考文献
