ニュースやテレビで当たり前のように出てくる「Z世代」という言葉。
若い世代を指すことはわかりますが、ふと考えると気になります。
そもそも、なぜ「Z」なのでしょうか。
結論は意外なほど単純です。
X世代、Y世代と続いたため、その次がZ世代と呼ばれるようになりました。
Zという文字自体に、現代の若者の性格や価値観を表す特別な意味があるわけではありません。
では、なぜ最初がAではなくXだったのでしょう。そして、団塊世代やゆとり世代など、なぜ私たちは人を「○○世代」と分けるのでしょうか。
少し掘り下げてみます。
なぜZ世代は「Z」なのか
始まりは「X世代」だった
アルファベットによる世代名の流れは、X世代から始まります。
「Generation X」という表現は1950年代までさかのぼり、写真家ロバート・キャパが、戦後に成長した若者を扱ったフォトエッセイに用いた例が知られています。
その後、1991年にカナダの作家ダグラス・クープランドが『Generation X: Tales for an Accelerated Culture』を出版。この作品が広く読まれ、「Generation X」という呼び名も浸透していきました。
ニッセイ基礎研究所の解説では、Xには「未知」という意味があり、当時の人々にとって戦後に育った若者が「未知の世代」だったことと結び付けて説明されています。
Xの次がY、その次がZになった
のちに、X世代に続く世代は「Y世代」と呼ばれるようになり、ミレニアル世代という名称も広まりました。
Y世代は、2000年前後に成人期を迎える世代だったことから「ミレニアル世代」と呼ばれています。
そして、その次に位置付けられたのがZ世代です。
つまり、
X世代 → Y世代(ミレニアル世代) → Z世代
という流れです。
野村総合研究所(NRI)は、Z世代を「1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代」と説明しています。
最初からA、B、C……とすべての世代を順番に分類する計画があったわけではありません。先に「Generation X」があり、そこからY、Zへと続いていったのです。
Zの次は「α世代」
では、X、Y、Zまで使った後はどうするのでしょうか。
そこで登場したのがα(アルファ)世代です。
ニッセイ基礎研究所によると、「Generation Alpha」という名称は2008年にオーストラリアの社会研究者マーク・マクリンドルによって考案されました。
ラテン文字の最後であるZの次に、ギリシャ文字の最初であるαを使い、新しい時代の始まりをイメージした名称です。
一般には2010年代序盤以降に生まれた世代を指しますが、Z世代と同じく、世界共通の厳密な境界があるわけではありません。
「Z世代」は誰が決めているの?
では、誰が「ここからここまでがZ世代」と決めているのでしょうか。
実は、世界共通の公式な決定機関はありません。
資料によってZ世代の始まりや終わりの年が違うのも、そのためです。
NRIは「1990年代半ばから2010年代序盤」としていますが、ニッセイ基礎研究所の資料では1996~2012年生まれをZ世代として扱っています。
つまり、ある年を境に突然、人の性格や価値観が変わるわけではありません。
世代名は、人を厳密に分類するものではなく、社会の変化を大まかに捉えるための区分と考えたほうが実態に近いでしょう。
団塊、氷河期、ゆとり、AYA……「○○世代」は何を基準に分けている?
日本にはZ世代以外にも、さまざまな「○○世代」があります。
団塊世代、団塊ジュニア世代、バブル世代、就職氷河期世代、ゆとり世代、AYA世代などです。
ただし、これらは同じ基準で作られた分類ではありません。
| 呼び方 | 主な基準 | おおよその意味 |
|---|---|---|
| 団塊世代 | 出生数・生まれた時期 | 1947~1949年生まれ |
| 団塊ジュニア世代 | 出生数・生まれた時期 | 1971~1974年生まれ |
| バブル世代 | 就職時の経済環境 | バブル景気期に社会人になった層 |
| 就職氷河期世代 | 就職時の雇用環境 | 雇用環境が厳しい時期に就職期を迎えた層 |
| ゆとり世代 | 教育環境 | いわゆる「ゆとり教育」の影響を受けた層 |
| ミレニアル世代 | 生まれた年代 | 2000年前後に成人期を迎えた世代 |
| Z世代 | 生まれた年代 | X・Yに続く世代 |
| α(アルファ)世代 | 生まれた年代 | Z世代に続く世代 |
| AYA世代 | 年齢・ライフステージ | 思春期から若年成人の年代 |
団塊世代と団塊ジュニア世代は、人口動態と強く結びついた呼び名です。
内閣府は、第一次ベビーブームにあたる1947~1949年生まれを団塊世代、第二次ベビーブームを形成した1971~1974年生まれを団塊ジュニア世代としています。
一方、就職氷河期世代は、生年そのものより「いつ就職期を迎えたか」が基準です。厚生労働省では、バブル崩壊後の雇用環境が厳しい1993~2004年ごろに就職活動をしていた人々を就職氷河期世代としています。
このほか、バブル世代は就職時の景気、ゆとり世代は教育環境と結びついた呼び方です。
同じ「○○世代」でも、人口動態、経済状況、教育制度、生まれた年代など、名前がつく理由はさまざまなのです。
※バブル世代やゆとり世代などは、資料や文脈によって対象範囲が異なります。
AYA世代はZ世代とは別の分類
さらに性質が違うのが「AYA世代」です。
AYAは Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人) の頭文字で、主に医療などの分野で使われる年齢区分です。
Z世代との大きな違いは、固定された生年がないことです。
Z世代は年齢を重ねてもZ世代のままですが、AYA世代は一定の年齢を過ぎれば、その区分から外れます。
つまり、
Z世代は「いつ生まれたか」を示す区分、AYA世代は「現在どの年齢層にいるか」を示す区分
という違いがあります。
なぜ人を「○○世代」に分けるのか
境界が曖昧なのであれば、なぜわざわざ世代に名前をつけるのでしょうか。
理由の一つは、同じ時期に生まれた人は、人生の似た段階で同じ社会変化を経験するからです。
子どものころからインターネットがあったのか。
学生時代にスマートフォンやSNSがあったのか。
就職したときが好景気だったのか、不況だったのか。
新型コロナウイルスの流行を子どもとして経験したのか、社会人として経験したのか。
同じ出来事でも、何歳のときに経験したかによって影響は変わります。
ニッセイ基礎研究所も、世代ごとにどのような時代を歩き、市場や社会の変化によってどのような生活習慣を身につけたのかを大まかに把握するうえで、世代論には意味があるとしています。
社会の変化を見るには、世代という切り口は便利なのです。
「Z世代は○○」と決めつけるのは危険
一方で、世代名には注意も必要です。
Z世代については、デジタルネイティブ、SNSを重視する、タイパを重視する、仕事よりプライベートを大切にするといった特徴がよく語られます。
年代別の調査で一定の傾向が出ることはありますが、そこから「Z世代の人はこういう人だ」と決めつけるのは別の話です。
たとえば今の20代が50代より新しいSNSをよく使っていたとしても、それがZ世代だからとは限りません。単に若い人ほど新しいサービスを使いやすいだけかもしれません。
世代の影響なのか。
年齢の影響なのか。
その時代を生きる全員に起きた社会変化なのか。
完全に切り分けるのは簡単ではありません。
「Z世代は○○」「ゆとり世代は○○」という言葉を見かけたときは、本当にその世代特有の特徴なのかを少し考えてみる必要があります。
世代名は社会を見るための目印
最初の疑問に戻ります。
なぜZ世代は「Z」なのか。
答えは、X世代、Y世代と続いたため、その次がZ世代になったからです。
ただ、少し掘り下げると、「○○世代」がすべて同じ基準で分けられているわけではないこともわかります。
団塊世代は人口動態、就職氷河期世代は就職時の経済環境、ゆとり世代は教育環境、Z世代は生まれた年代、AYA世代は年齢やライフステージ。
世代名をつけると、複雑な社会の変化をわかりやすく整理できます。一方で、本当は一人ひとり違う人まで同じように見えてしまうこともあります。
だから「Z世代だから、この人はこういう人だ」と考えるより、
「この人は、どんな時代を当たり前として育ってきたのだろう」
と考えるための目印として使うくらいが、ちょうどよさそうです。
Z世代の「Z」が気になっただけだったのに、調べてみると「なぜ人は世代を分けるのか」というところまでたどり着きました。
ふと気になったことを少し深く調べてみると、言葉の向こうに社会の仕組みが見えてくることがあります。
参考資料
